「糖尿病になってから、好きだった甘いものは全く食べていません」
診察室で、こう話してくださる方は少なくありません。
糖尿病と診断されると、 「ケーキはもう食べられない」 「友人との外食が楽しめなくなる」 「家族と同じものを食べられない」 そんな不安が一気に押し寄せてくることがあります。
でも、私は患者さんに 「これから一生、好きなものを我慢してください」 とは言いません。
糖尿病治療に食事療法は大切ですが、 「糖尿病=我慢の生活」ではありません。
食事療法は“禁止するものを増やすこと”ではありません
食事は血糖値に影響します。 しかし、糖尿病の食事療法で本当に大切なのは、 「何を食べてはいけないか」ではなく、 その人の生活に合わせて“どう続けられるか”を考えること。
患者さんの生活は一人ひとり違います。
- 仕事の時間帯
- 外食の頻度
- 家族との食事スタイル
- 食べることの楽しみ
- これまでの食事制限の経験
こうした背景を無視して、 「外食は禁止」「甘いもの禁止」と言われても続けられません。
だから私は、 “できないことを増やす”のではなく、 “できることを一緒に探す” ことを大切にしています。
甘いものは食べてもいい?
結論から言えば、 糖尿病でも甘いものを一切禁止する必要はありません。 (これは多くの医療機関でも同じ考え方です。)
ただし、甘いものは糖質・脂質が多いものも多いため、 量・頻度・タイミングを工夫することが大切です。
実際の外来での例になりますが、「毎日コンビニスイーツを買ってしまいます。罪悪感があります…」 という患者さんに、私はこう提案しました
「毎日ではなく、週末に“ご褒美”としてケーキ屋さんのケーキを楽しむのはどうでしょう?」
回数は減りますが、 その分「今日は楽しみな日だ」と前向きに食べられます。
甘いものは “禁止”か“好きなだけ食べる”かの二択ではありません。
あなたの生活の中で、 楽しみをできるだけ残しながら血糖値を守る方法 を一緒に探すことが大切です。
糖尿病治療は「食事だけで頑張る時代」ではありません
糖尿病治療はここ10年で大きく進歩しました。
現在は、
- 血糖値
- 体重
- 心臓・腎臓への影響
- 低血糖の起こりやすさ
などを考慮しながら、 一人ひとりに合わせて薬を選べる時代です。
そのため、 「食事を極端に我慢して血糖値を下げる」 という治療だけではありません。食事・運動・薬を組み合わせて、 無理なく続けられる治療ができます。
場合によっては、 「好きなものを楽しむために薬の力を借りる」 という選択肢も自然です。(多くの医療機関も「我慢しすぎは逆効果」としています。)
「昔はこう言われた…」という方へ
長年治療を続けている方から、 「果物は禁止と言われた」 「ご飯はできるだけ減らすように言われた」 「甘いものは一切食べないようにしている」 という声を聞くことがあります。
当時の医学では必要と考えられていた指導です。 しかし、医学は進歩し、治療薬も増えています。
だからこそ、 「昔こう言われたから、ずっと同じでなければいけない」 と決めつける必要はありません。
今の身体・今の生活に合わせて、 「今の自分にとって最適な治療」 を一緒に考えていきましょう。
食事は“治療”であり“生活”です
食事は、ただの栄養ではありません。
- 家族と食卓を囲む
- 友人と外食を楽しむ
- 旅行先でその土地のものを味わう
- 仕事帰りに好きなものを食べる
こうした時間は、 その人の人生の大切な一部です。
糖尿病治療の目的は、 生活の楽しみを奪うことではありません。
あなたにとって大切なものをできるだけ残しながら、 どうすれば健康を守れるか。 それを一緒に考えることが、糖尿病診療の役割だと思っています。
ご家族も一緒に考えてみませんか?
糖尿病の食事療法は、ご本人だけでなくご家族にも関係します。
- 「夫が糖尿病になってから家族全員が同じ食事に…」
- 「母が極端に食事を減らしていて心配」
- 「何を食べさせたらいいか分からない」
こうした相談はとても大切です。ご家族が「これはダメ」と注意し続けることが、 かえって負担になることもあります。
当院には管理栄養士が常駐しています。 診察の中で必要があれば、 その場で栄養相談につなぎ、具体的な食事の工夫を一緒に考えます。
肩の力を抜いた治療へ
糖尿病と診断されると、 「これからずっと我慢しなければいけない」 と思ってしまう方がいます。
でも、糖尿病治療は “我慢を続けること”ではありません。
医学の進歩で選択肢は増えています。 今まで一生懸命頑張ってきた方こそ、 一度立ち止まって 「今の自分にとって無理のない治療は何だろう?」 と考えてみてほしいと思います。
糖尿病になったからといって、 人生の楽しみまで諦める必要はありません。
「食事制限がつらい」 「今の治療が合っているか相談したい」 「最近の糖尿病治療について知りたい」
そんな方は、ぜひ一度ご相談ください。 ご本人だけでなく、ご家族からの相談も歓迎しています。
一緒に、無理なく続けられる治療を探していきましょう。

