【院長コラム】#2 健康診断で「血糖値」や「HbA1c」が高いと言われたら?まず知っておきたいこと

健康診断の結果を見て、「血糖値が少し高い……」「HbA1cが基準値を超えている……」と書かれていると、不安になる方も多いのではないでしょうか。

一方で、

「病院に行かないといけないのは分かっているけれど、仕事や生活が忙しくて、そんな余裕がない」

「食事や運動を変えなきゃいけないのは分かっているけれど、もう少し様子を見てもいいかな」

と考える方もいらっしゃいます。

健診で異常を指摘されると、「今日から食事を全部変えなければ」「運動を始めなければ」と焦ってしまうかもしれません。でも、まず大切なのは、自分の身体で何が起きているのかを知ることです。

今回は、健康診断で血糖値やHbA1cが高いと言われたときに、まず知っておきたいことについてお話しします。


目次

まず知っておきたい「血糖値」と「HbA1c」

健康診断で血糖値について指摘された場合、まず確認したいのが「血糖値」と「HbA1c(ヘモグロビン・エーワンシー)」です。

血糖値は、採血したその時点で、血液中にどのくらいブドウ糖があるかを示す数字です。一方、HbA1cは、過去1〜2か月程度の血糖の状態を反映する指標です。

たとえば、

血糖値=その日の「小テスト」
HbA1c=ここしばらくの「通知表」

と考えると、少し分かりやすいかもしれません。

そのため、「血糖値が少し高かった」という結果だけで、すぐに「自分は糖尿病だ」と判断する必要はありません。

検査結果を一緒に確認しながら、現在の状態を知ることから始めてみましょう。


血糖値が高くなる理由は、人それぞれ

血糖値が高くなる理由は、一人ひとり違います。

「食べ過ぎたから」「運動不足だから」ということだけが原因とは限りません。

体質や遺伝的な要素、年齢、体重の変化、睡眠、ストレス、使用している薬など、さまざまな要因が関係しています。

特に日本人を含む東アジア人は、欧米人と比べて、それほど体重が増えていなくても糖尿病になりやすいことが知られています。

これは、インスリンを分泌する力など、糖尿病になりやすさに関わる体質的な違いがあるためです。

だからこそ、糖尿病は「食べ過ぎた人」や「運動しなかった人だけがなる病気」ではありません。

「自分の生活が悪かったからだ」と、一人で自分を責める必要はないのです。


健診で血糖値が高かったら何をすべき?

まずは、一度医療機関で相談してみることをおすすめします。その際には、血糖値やHbA1cだけを見るわけではありません。これまでの健診結果や体重の変化、血圧、コレステロール、腎臓の状態、家族歴なども確認します。

さらに、「どんな仕事をしているのか」「普段どんなものを食べているのか」「運動する時間はあるのか」「睡眠は十分にとれているのか」といった、普段の生活についてもお話を伺います。

そうすることで、「今、自分の身体で何が起きているのか」を一緒に整理していきます。

そして大切なのは、「糖尿病か、糖尿病ではないか」だけで終わらせないことです。

もし糖尿病であったとしても、必要な治療は一人ひとり違います。生活習慣の見直しを中心に経過をみる方もいれば、薬による治療を早めに始めたほうがよい方もいます。

大切なのは、検査結果だけを見て一律に治療するのではなく、その人の身体の状態と生活に合わせて、治療を考えること。

私は、それが糖尿病診療の大切なところだと考えています。


「糖尿病」≠「厳しい食事制限」

血糖値が高いと分かった瞬間、「今日からご飯を半分にしよう」「甘いものは全部やめよう」「外食は禁止だ」と考えてしまう方もいらっしゃいます。

もちろん、食事や運動を見直すことは、糖尿病治療にとって大切です。でも、最初から100点を目指して頑張りすぎると、疲れてしまいます。

糖尿病は、骨折のように「治ったから、以前とまったく同じ生活に戻ってよい」という病気ではありません。

長く付き合いながら、その時々の生活や身体の状態に合わせて治療を続けていく必要があります。

だからこそ、「どうすれば一番頑張れるか」ではなく、「どうすれば無理なく続けられるか」という視点が、とても大切だと私は考えています。


糖尿病治療は以前と大きく変わっています

糖尿病の治療は、ここ数年で大きく進歩しています。

現在はさまざまな治療薬があり、血糖値を下げることだけではなく、体重、低血糖の起こりやすさ、心臓や腎臓への影響なども考えながら、一人ひとりに合わせて治療を選べるようになってきました。

そのため、「糖尿病になったら、厳しい食事制限をして、毎日たくさん運動して、薬をずっと飲まなければいけない」というイメージだけで、必要以上に不安になる必要はありません。

今の自分の状態を知ったうえで、「自分にとって、どんな治療なら続けていけるのか」を一緒に考えていけばいいのです。


「まだ症状がないから大丈夫」には要注意

糖尿病の難しいところの一つは、血糖値がかなり高くなっても、自覚症状がないことが少なくないということです。

「何も症状がないから大丈夫」と思ってしまう気持ちも分かります。

しかし、糖尿病では、自覚症状がない時期から少しずつ身体への影響が進んでいることがあります。

だからこそ、「もっと早く受診しておけばよかった」となる前に、健診で異常を指摘された段階で、一度現在の状態を確認しておくことには意味があります。

早い段階で相談できれば、必要以上に生活を制限することなく、今後どうしていくかをじっくり考えることもできます。


ご家族からの相談も歓迎しています

糖尿病は、ご本人だけの問題ではありません。食事や生活をともにするご家族にも関係する病気だからです。

実際に、「父が健診で血糖値が高いと言われたけれど、本人は病院に行きたがらない」「母が糖尿病と言われてから、食べるものを極端に制限していて心配」といったご相談を受けることもあります。

もちろん、最終的にはご本人の意思が大切です。ただ、ご本人だけで抱え込まず、まずはご家族から相談していただいても構いません。

「どう声をかければいいのか分からない」という段階でも大丈夫です。


まずは「知ること」から始めませんか?

健診で血糖値が高いと言われたからといって、すぐに生活を大きく変える必要はありません。

まずは、「今、自分の身体で何が起きているのか」を知ること。そのうえで、食事や運動、薬など、これからできることを一緒に考えていけばよいのです。

当院では、糖尿病を専門とする医師を中心に、管理栄養士や看護師などのスタッフも一緒になって、一人ひとりの生活や考え方を大切にしながら、その方に合った治療を考えていきます。

「健診で血糖値が高いと言われたけれど、何をすればいいのか分からない」

「HbA1cが高いけれど、糖尿病なのかよく分からない」

そんな段階でも構いません。まずは「知ること」から、一緒に始めてみませんか?

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